クリスマス、聖ニコラウス、そしてもう一人の来訪者。
プレゼントを配る優しい聖人がいる一方で、悪い子供を鎖でくくって連れ去る怪物がいる。
アルプス地方には、そんな相反する二人の来訪者を同時に迎える伝統が今も残っている。
この記事では、この怪物がどこから来て、なぜ今も祭りとして続いているのかを、かいこわ視点で整理していく。
今回は、クランプスとは?アルプス地方に伝わるクリスマスの怪物について紹介しよう。
クランプスとはどんな存在か
クランプスは、オーストリアを中心としたアルプス地方の民間伝承に登場する怪物である。
半分が山羊、半分が悪魔のような姿を持ち、長い舌と大きな角、そして鎖と鞭を身にまとっている。
クリスマスの時期に子供たちへ贈り物を届ける聖ニコラウスとは対照的に、クランプスは一年を通して悪い行いをしてきた子供たちを罰しにやってくる。
言うことを聞かない子供は、背中の籠に押し込まれ、冥界に連れ去られるとされる。
聖人と怪物、この二人が対になって同じ時期に子供たちのもとを訪れるという構図が、クランプスという存在の最大の特徴だ。
クランプスの名前は、ドイツ語で爪やかぎ爪を意味するクランペンに由来するとされる。
北欧神話の冥界の女神ヘルの息子であるという説や、山岳地帯に古くから伝わる精霊ペルヒテンの系譜に連なる存在だとする説もあり、正確な起源は一つに定まっていない。
クランプスの発祥
クランプスの起源は、キリスト教が広まる以前のアルプス地方にまでさかのぼるとされている。
冬至の頃に集まるとされた悪霊を追い払うため、村の若者たちが毛皮をまとい、恐ろしい仮面をかぶって家々を練り歩く風習があった。
この土着の風習が、後にキリスト教の聖ニコラウス伝説と結びつき、良い子には聖人、悪い子には怪物という現在の形になっていったと考えられている。
記録上は12世紀頃のドイツ語圏の伝統にその原型が見られるという説もある。
こわくんキリスト教が広まる前から、悪霊を追い払う風習があったっていうのが土台になってるんだな。
クランプスナハトという祭り
現在でもオーストリアやドイツ南部、スロベニア、北イタリアなどでは、12月5日の夜をクランプスナハトと呼び、大掛かりな祭りが行われている。
毛皮をまとい、角のある恐ろしい仮面をかぶった若者たちが街を練り歩き、鎖の音を鳴らしながら子供たちを脅かす。
怖がらせる祭りでありながら、地域の人々が一体となって参加する、冬の風物詩でもあるのだ。
かいちゃん本物の仮面行列を見ると、怪物っていうより地域の伝統芸能に近い迫力があるらしいよ。
こわくん怖い存在を祭りとして受け継いでいくっていうのは、日本のなまはげにも通じるものがあるよな。
なぜクランプスは今も語られるのか
クランプスの物語は、単に子供を怖がらせるだけのものではない。
善と悪、光と闇、優しさと厳しさ。
相反する二つの存在が同じ季節に並び立つという構図には、人間の行いには必ず結果が伴うという、古くからの教えが込められている。
優しさだけでは成り立たない世界の在り方を、子供たちに伝える役割を、クランプスはずっと担ってきたのだ。
近年ではハリウッド映画の題材にもなり、アルプス地方の伝承が世界中に知られるきっかけにもなった。
2015年公開の映画「クランプス」はその代表例で、アメリカでも一定の知名度を獲得し、以後クランプスをモチーフにしたグッズやイベントが欧米各地で見られるようになった。
一度は禁止された時代があった
何百年も受け継がれてきたクランプスの伝統だが、実は一時期、完全に禁止されていた時代がある。
1934年から1938年にかけて、オーストリアがファシスト政権の統治下にあった時期のことだ。
当時の政府は、クランプスを反キリスト教的な存在、あるいは社会主義と結びついた象徴とみなし、各地でクランプス役の仮装そのものを法律で禁止した。
東チロル地方のリエンツでは、クランプスの仮装行列が禁止されただけでなく、聖ニコラウス役を務める者にも許可証の取得が義務づけられたという記録が残っている。
オーストリアのカトリック系新聞も、この時期クランプスのボイコットを呼びかけていた。
かいちゃん冬の祭りが政治的な弾圧の対象になってたなんて、想像もしなかったよ。
第二次世界大戦が終わり、ファシスト政権が崩壊すると、クランプスは再び街を歩けるようになった。
一度は法律によって封じられた伝統が、政権の終わりとともに息を吹き返し、今日まで続いているという経緯そのものが、クランプスという存在の生命力の強さを物語っている。
怖い姿をした冬の祭りが、時に社会や権力の変化を映す鏡にもなってきたわけだ。
クランプスカードという文化
19世紀末から20世紀初頭にかけて、中央ヨーロッパではクランプスカードと呼ばれるグリーティングカードが広く流通していた。
カードには、鎖と鞭を手にしたクランプスが子供を懲らしめる様子や、時にはユーモラスな構図で描かれている。
クリスマスシーズンの挨拶状として親から親へ、友人から友人へと送り合う習慣があった。
この文化は一時期廃れたものの、近年のクランプス人気の高まりとともに、アンティークのクランプスカードを収集する愛好家も増えている。
こわくんクリスマスカードなのに描かれてるのが怪物っていう、そのギャップがまた独特だよな。
怖い存在でありながら、家庭の中で親しみを持って扱われてきたという点は、クランプスナハトの祭りにも通じるものがある。
いかがだっただろうか
今回は、クランプスとは?アルプス地方に伝わるクリスマスの怪物について紹介した。
キリスト教以前の風習とクリスマスの伝統が結びつき、何百年もの時を経て今も祭りとして受け継がれているという事実は、民間伝承の懐の深さを感じさせる。
- 民間伝承として扱い、実話として断定しない
- 地域の宗教・伝統文化を軽々しく扱わない
- 祭りの実際の様子は地域差があることを踏まえる
上記の点を忘れないように心がけてほしい。
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それでは次回のお話で会おう。

